「星紋」キャラが織りなす、日常の会話、SSなど。
想い、それぞれに


いよいよ、文化祭の開幕となった。
参加するのは基本的にクラスごとで、校庭やグラウンドでの屋台、教室での飲食店などのショップや展示会、そして体育館及び講堂での音楽や演劇などの出し物と、形式は自由である。もちろん、事前に文化祭実行委員会に申請しなければならないが。体育館や講堂での発表が終われば、個人別に行動は自由である。今回は2年1組が喫茶店として講堂を使うことになったため、発表会は体育館がメインとなる。
朱雀高校の体育館には講堂があるにもかかわらず舞台があり、雨の日には体育祭もできるほどの広さだ。

さて、その講堂では。
「……やっぱ、すごい集客力だな(^^;)」
クラス委員長の榎木が、感嘆したように目の前の情景を見ていた。
200人分はある席は、ほぼ満席。今回はさすがに外に行列ができるということはなかったが、それでもひっきりなしに人の出入りは激しい。しかも朱雀や他校の生徒に混じって、一般の客も入っている。
「講堂にしたことで、入りやすくなっているのかなあ…」
ぽつりと、榎木は呟いた。


「……じゃ、次の方どうぞ」
佑介がいる「占い」コーナーも、30脚ある椅子が満席になっていた。整理券を渡しており、後尾部にいる生徒が椅子の空き状況を見ながら、交代制で番号を呼んでいる。
初めから「占い」が目的で入ってきた生徒も多々おり、椅子に座って待っていたところに、仕切りのカーテンが開いて着物姿の佑介が現れたときは、その場にいた生徒たちは顔を赤らめ呆然となってしまったものだ。
次に佑介の目の前に座ったのは、やはり他校の女生徒。ちょっと華やかな雰囲気を醸し出している。今時の女子高生といったところか。
「じゃ、この紙にお名前と生年月日を…」
「……それより。あなた今度の週末、暇?」
「…へ?」
「もし暇なら、私とどっか行かない?」

(―――こんなところで、逆ナンかよ…)
佑介は内心で舌打ちした。だが、それもおくびに出さずに。
「お誘いは嬉しいけど、あいにく先約が。弓道の練習がありますので」
にっこりと、上辺だけの笑顔で答える。
「そんなこと1日くらい休めるでしょう」
女生徒はなおも言い募る。
「そうもいきません。来年には全国大会があって、その予選大会もありますから」
これは本当だ。
来年の3月始めに静岡で行なわれる全国高校弓道大会に出場するための予選大会が、近く東京でも行なわれるのだ。
「いいじゃない、……ね?」
佑介が堕ちるとでも思っているのだろうか。彼女は嫣然と笑いかけた。

……しつこいんだよ。
すっかり辟易してしまった佑介。
目の前の彼女に、やはり夏に自分に交際を申し込んできた、巳波香苗の姿が彷彿された。
その時、ひとつの考えが浮かんだ。
(……星野さんじゃないけど…、ここは見せつけてやるのも手だな)
佑介はそう思い、さりげなく厨房のほうを見た。すると、ちょうど栞と目があった。
『…コーヒー、いる?』
と言っているかのようにカップをかざす栞に、目で返事する。
栞が来るまでの間も、なんとか丁寧に断りの言葉を続ける佑介。…そのうちに。
「失礼します」
と、栞がコーヒーを持ってきた。
「ああ、ありがとう」
そう言った佑介に、栞もにこっと微笑む。……だが、次の瞬間その顔が赤くなった。
佑介の手が伸び、さらりと栞の髪を梳いたのだ。
「……汗を掻いてる。大丈夫か?」
「あ…///。う、うん、大丈夫。厨房が調理とかの熱で、ちょっと暑くなってるだけだから」
変わらず栞の前髪を梳いている佑介の手に、栞は恥ずかしそうに手を添えてそっと外す。
「そっか。……あまり動き回るなよ」
うん、とはにかんで笑ってから、栞は厨房に戻っていった。
そんな二人の様子を見てどういうことか感づいたのか、女生徒の手はわなないていた。

「……で? どういうお話でしたっけ」
しれっといった風で言う佑介に、
「もういいわ!」
と、彼女はがたっと椅子から立ち上がって出て行った。
「……ったく。……はい、次の方」
そっと溜め息を吐いて呼ぶ佑介。
「…さすがですね、ああいうタイプの子を追い返せるなんて」
「人聞きの悪いことを言わないで下さい(^^;)」
くすくすと笑いながら座った、自分より年上…3年だろうかと思える女生徒に、佑介は苦笑しつつ答える。
「さっきの女の子が、土御門さんの彼女さんですか?」
「ええ、そうです」
照れくさそうに笑って、それでいてきっぱりと答える。
そう。自分にとってかけがえのない、大切な存在。

「…じゃ、私の悩みも聞いてくれそうですね」
「……? では、この紙にお名前と生年月日を書いてもらえますか」
彼女の言葉を不思議に思いながらも、佑介は紙を前に差し出した。
そしてそれらを書いた紙に、佑介はそっと手を触れる。
「……」
その様子を、彼女はじっと見つめていた。
「…越智さん…でしたか、……好きな人がいるんですね?」
「さすが。やはり視えているんですね」
「同じ高校の…同じ部活の人ですか」
「ええ。ずっと想っているんですけど、もうすぐ会えなくなるから、告白したほうがいいのかどうか」
「………」
「嫌われてはいないと思うんですけど、相手の気持ちがつかめなくて……」
「……わかります。俺もそうでしたから」
ふっと、佑介は目を細める。
「土御門さんも?」
「ええ、あいつとは幼なじみで、ずっと一緒だったんです。嫌われていないというのはわかっていましたが、それが異性としてなのか、幼なじみとしてなのかがわからなくて、伝えられずにいたんですよ」
「………」
「でも今は…。この気持ちを伝えられてよかったと思ってます。……だから、大丈夫ですよ」
それは本当にそう思う。もしも報われなかったとしても、伝えずに後悔するよりは、ずっといい。
「勇気を出して、あなたの想いを彼にぶつけてください」
先ほどとは違う、心からの笑顔を浮かべて、佑介は越智に言った。

それを見た越智は。
「……そうてすね。『当たって砕けろ』ですよね」
こちらも吹っ切れたような笑みを浮かべた。佑介もこくりと頷く。
「……話を聞いてもらえてよかった。思い切って彼に話してみます」
「ご健闘、祈ってますね」
「ありがとう。あなたも彼女さんとお幸せにね」
「…はい、ありがとうございます」
彼女は晴れ晴れとした表情で、片手を上げて講堂を出ていった。

10時になり、佑介にとっては20分の休憩時間になる。今回は昼休みを含め、3回の休憩を設けているのだ。
「だーりんが休憩だってよ。あんたも行ってらっしゃい♪」
「ちょ、ちょっと////;;」
栞も級友たちにからかわれ押し切られながらも、佑介と一緒に休憩をとることになった。
……とはいえ、外に出れば着物姿の佑介は目立つこの上なかった。背が高く姿勢もよい。その上「男前」だ。そんな男子の着物姿はいやでも目を引いていた。
すれ違う生徒は皆振り返り、「うわ、かっこいい!」「すごい似合ってるよね」とささやいている。中には携帯やデジカメでこっそり写真を撮っている生徒もいる。思わず息をつく佑介に、隣の栞も苦笑している。
「なんつーか…、この分だと中庭も人でいっぱいで気持ちが休まらないだろうな;; ちょっと寒いかもしれないけど、屋上に行くか」
「うん」
栞もそれに同意して、屋上に向かった。

屋上は予想通り誰もいなく、佑介は思いっきり背伸びした。
「……やっとほっとした感じだなあ(^^;)」
「お疲れ様(笑)。…はい(^^)」
と、栞はジャーポットを取り出してコーヒーを注いだ。
「え、いつの間に?」
「さっき、作っておいたのを入れたの」
「さすが(笑)、ありがとな。……ほら」
ふわりと、佑介は栞の背中に何かをかけた。
「あ……」
それは、佑介の着物の羽織。
「……寒いからな、着とけよ」
「……ありがと////」
―――温かい。
それは羽織の温みのせいだけではないことは、わかっているけれど。

しはらく、黙ってコーヒーを飲んでいた佑介だが。
「……さっきはごめんな、栞」
「?」
何を謝っているのかと、栞はきょとんとした。
「―――あの女を追い返すのに、利用したようになってしまったな」
「…ああ、あれ。全然気にしてないよ。……むしろ、嬉しかった」
「え……?」
言いながら、栞は佑介の肩に頭を置いた。
「あの人たちに、『そういうこと』だってことを見せてくれたんだもの」
「栞……?」
厨房から見える、佑介の姿。
あの場にいた少女たちの視線に、不安がなかったわけではない。
「……ちょっと、ね。…不安…だったの…」
消え入りそうな声だった。

「……ばか」
自分の肩に乗っている栞の頭を、そのまま抱きかかえる。
「俺は栞しか、おまえしか見てないよ。……ずっと、な」
「!」

―――佑介くんはね、ずっと、それこそ小学生くらいの頃からしーちゃんしか見ていなかったわよ

佑介に告白された日に、姉から言われた言葉が記憶によみがえる。
「……佑…くん」
こんなに……これほどに、自分は想われていたのだ。
栞はどう言えばいいのかわからず、ぎゅっと佑介に抱きついてきた。
佑介も何も言わず、それに応えるように強く抱きしめ返した―――

************************************

文化祭第2弾です。
この後はま、教室に戻っていつもの通り…ってとこでしょうか(笑)。
続き…あるのか?(^_^;)

……それにしても、私は佑よりも、栞ちゃんの心情が自然と出てくるようです…「親」なのに(爆)




ジャンル:小説・文学 テーマ:ショートショート

2008⁄11⁄09(Sun) 22:25   短編小説 | Comment(2) | Trackback(0) | ↑Top


Comment


@朱雀高校校門前

日夏里「ついたぞ♪」
満実「へえ。ほんとに駅からすぐなんだね」
このみ「おまけにうちと違って綺麗ね」
都「・・・実ははじめて来た(笑)」←都は栞ちゃんの小学校の同級生なので朱雀は徒歩圏内(笑)
翔子「あ〜、今日はちゃんと時間に来られた〜」←遅刻魔である。
日夏里「相変わらずなんだから、翔ちゃんは。同じ港区内のくせに〜」
翔子「三田と芝じゃ方向違うからさあ(^^;)近所でここの生徒よく見かけるけど」
次子「・・・・・とりあえず、中に入らないか。・・・・ここにいると目立つ;;」

***************

おはようです♪
翠嵐メンバーズ、やって参りました(笑)
都ちゃんがまずは栞ちゃんに会いたいのでこちらにやって来ましょう。みんなと(笑)
が。うちのメンバーは悩んでててもあまり人に頼らん連中だからねえ(^^;)
純粋にお茶してそうです(笑)
あとはきっとそれぞれ好き勝手にあちこち見て回ることでしょう。

そうそう、またもや、おいしい場面があって嬉しゅうございますわv

とはいえ、佑介くんがまさかこーさんを思い出してあんなことするとはね(笑)
なかなかあしらい方がうまいんでないかい?(爆)
・・・・・でも、こーさんだったら引き寄せてキスのひとつもしてますわ、咲子に(大爆)

何か一波乱あるのか、穏やかに終わるのか。
楽しみにしてますね。



2008/11/10 05:44URL | 橘日夏里[ 編集]


梁河「なんつーか…。ホントにすごいな;;」
和樹「……だろ? 前はもっと大変だったんだぜ、走り回って。今回は人数も倍以上に増えたからなんとか行けてるけどさ」
梁河「噂の『占い』もすげーな。ホントに女子ばっか(^_^;)」
和樹「みんな、ほとんど目がハートになってるよ;; まー、あれじゃしょーがないけどな〜」

********************

おこんばんわです。
ま、いらして下さったんですね〜お嬢さん方♪
…実は…次の話で、成り行きで日夏里ちゃんたちをお借りすることに(^_^;)。澤樹さんが校内誌の文化祭特集のために佑に写真撮らせてくれと頼んで、その繋がりで;;
つーさんに気が付いて「あなたたちも一緒にどう?」って(^_^;)。すみませーん。

……はい、今回も書いちゃいました(爆)

>なかなかあしらい方がうまいんでないかい?(爆)
わはは、佑も案外策士かもですわよ?(笑)。こーいうことにかけては(爆)。

確かにね、こーさんだったらしますわよね、人前でも(爆)。
佑はなあ…普通はしませんが、こういったときはわかりませんね(爆)。

2008/11/11 00:40URL | 梁河康一[ 編集]

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